信頼と尊敬

先日、Youtubeで大好きな曲、アントン・ブルックナーの交響曲第8番、通称(ブル8)を何気なく見ていました。あまりにも感動したので、紹介したいと思います。

自分は、Youtubeであまりちゃんと音楽を聴きません。また、音楽はなるべく大事に、じっくりと聴きたいと思っていますので、Youtubeでいいなと感じられたならば、即刻CDを探し出し、買って大事に聴きます。

余談ですが、Youtubeは便利でいつでも気軽に音楽が聴けます。ただ、この便利さも、便利という良い面と、CD,DVDなどの音源が売れなくなるといった悪い面と存在します。自分は、そう感じています。

先日、久しぶりに近くのスバル書店に行き、CDを買うために店内を歩いたのですが、元々CDが置いてあった場所は、おもちゃだとか、パズルだとかいったものに変わっており、CDは、ほんの一角に寂しく陳列していました。

ただ、レンタルCDは、栄えていますので、もはやCD、DVDは買うのではなく、借りてきて聴く、見るといった時代なのでしょう。こうして時代が変わって行くのでしょう。そうしたことを最近では強く感じます。

また、レコードの時代では、一曲一曲を大切に聴いていたのではないでしょうか?現在ではいかがでしょうか?音楽を片っ端から聴き、まだ曲が終わらないにも関わらず次から次へと掛け替えるのではないでしょうか?

自分は、レコード音源では、レコードの針が命を削ってその音楽という生命を奏でていることを感じます。ですから、一曲一曲を噛みしめて聴くことが、音源と奏者への礼儀だと感じています。

CD音源においても、出来る限り1曲を最初から最後まで噛みしめて聴くことを最近では気を付けていますが、自分にとって好きでない曲、理解しがたい曲は、逆に退屈になり、聴くことが辛くなります。そして聴くのを止めることもありますので、それは、全ての音楽には当てはまりませんが、理解できる曲については、十分に噛みしめて聴きたいと思います。

さて、前置きは長くなりました。自分だけの基準で言いますが、久しぶりにYoutubeにおいてでも、心を奪われ、目頭が熱くなる演奏を見つけました。

ブルックナーの交響曲第8番といえば、約80分ある超大作です。ブルックナーの音楽は、音楽の大聖堂と言う人も居ます。本当に好きでなければ、80分の長い時間を聴くことは苦痛になるはずです。自分は、この80分が、すぐに過ぎてしまうほど短く感じます。

自分は、ブル8を全クラシック音楽中の傑作中の傑作と感じています。この曲を生涯知らずにいる人は、本当にもったいないことだと感じます。理解出来なければ、何回も何回も聴いて頂きたいです。また、偉大な巨匠達が、何度も何度も人生を掛け表現し挑戦し続けた名曲であることもお伝えいたしましょう。

これが、伝説の名演です。見て下さい。

演奏は、ロブロ・フォン・マタチッチ指揮 NHK交響楽団のライブ映像です。音楽が出た途端に、すごい熱いエネルギーを感じます。NHK交響楽団は、日本のオーケストラです。世界的に見ればさほど有名でもないと思います。

ところが、このマタッチッチという指揮者が指揮台に上がるだけで、このオーケストラの音は激変し、歴史的な演奏へと変わります。何故なんでしょうか?。。

マタチッチの演奏スタイルを見る限り、大きな象が踊っているようにしか見えません。また、激しい振り方でもありません。なぜ、楽団は、異様な高ぶりを見せるのでしょうか?

自分が感じることの一つに、信頼と尊敬が、指揮者と楽団に大きく生まれたからなのでしょうか?これが、マタッチッチの偉大さなんでしょうね。曲は、かなりスケールが大きく、これぞという盛り上がりでは、雷鳴のごとく厳しく響き渡ります。

この深いハーモニーは、個人個人の個性と、指揮者の個性とが上手く融合したからなんでしょうか?独奏の演奏では、絶対に感じられない感覚です。

どういう意味か分かりやすく言えば、独奏のみの個性と、独奏の集合体である全体としての個性との違いといいましょうか。ハーモニーは、非常に難しく、一人が目立とうと自我を出せば、そこで響きは一気に濁り、美しさを感じなくなります。

ところが、このマタチッチとNHK交響楽団の演奏は、一人一人の異様な高揚があるにもかかわらず、見事にハーモニーし、指揮者と、楽団と、聴衆の心が一つに調和しています。

最後、演奏が終わって楽団が去っても拍手が鳴りやみません。聴衆も多分あまりの素晴らしさに心がジーンとなったに違いありません。この素晴らしい演奏を生で聴いた人は多分、一生の心の宝になったに違いありません。とても羨ましく感じます。

このYoutubeで演奏を聴いた後、発売されているSACD(スーパーオーディオCD)を買っちゃいました。大事に手元に置いておきたいCDの一つとなりました。

これが自分の心のコレクションだと思っています。

読者の皆様も、心の中の宝、見つけてみませんか?